いじめは無くならない

 最近話題になっているいじめ報道ですが、政府の考えるいじめ対応策というのは何かピントがずれているような気がします。どうすればいじめを無くせるか。この問いに答えはありません。もしいじめを完全に無くす方法なんてものがあるなら、とっくにいじめはなくなっています。今考えるべきなのはどうやればいじめを無くせるかではなく、被害者側の立場で対策を考える事ではないかと思います。

いじめ緊急提言決定 『見て見ぬふり』も加害者
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20061129/eve_____sei_____000.shtml

 これを読む限り、政府の偉い人はいじめの実態を何もわかっていません。いじめた人間を隔離すればいじめが起きないなんて、短絡的過ぎて呆れるばかりです。そもそもいじめというのは個人が個人に対して行うものではありません。集団が個人に対して行うものです。いじめに加担した人間、いじめを見て見ぬ振りをした人間を次々と隔離していったらあっと言う間に学級閉鎖でしょうね。


 何故いじめに加担するのか、何故いじめを見て見ぬ振りをするのか。その答えは「いじめられたくないから」です。もし「いじめは良くない事だから止めよう」なんて迂闊に発言しようものなら、次の日には自分がいじめのターゲットになっていたなんて事も十分に考えられます。誰か一人がスケープゴートになれば自分はいじめのターゲットにされずに済む。だから見て見ぬ振りをするのです。


 いじめを受けた事がない人にはいじめの実態はわかりません。まず、どのようにしていじめが起きるのかといういじめのメカニズムの解析。そして、実際にいじめのターゲットにされたらどのように対処すればいいのか。いじめのターゲットにされないためにはどうすればいいのか、といういじめの回避策を考えること。いじめの実態を理解せずに「いじめを無くす方法」を考えたところで結論が出るはずがありません。

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 学校でのいじめ問題と切っても切れないのがスクールカーストです。というのも、いじめのターゲットにされる人間はほぼ確実にスクールカーストの底辺にいる人間だからです。ただし勘違いしないで欲しいのは、底辺にいるからという理由だけでいじめを受ける訳ではないという事です。


 よく、「オタクはいじめを受けやすい」などと言われますが、私はそうは思いません。いじめのターゲットにされる条件として、スクールカーストの底辺にいる事。そしてもう一つ、友達がいなくてクラスで孤立している事、という条件があります。もしクラス内でオタクが自分一人だけというのであれば、確かにそれは格好のいじめのターゲットになるでしょう。しかしクラス内にオタクが複数人いる場合、オタクは仲間意識が強いのでオタク同士でグループを作るのが普通です。前述のようにいじめは個人を対象としているので、オタク同士で固まっている限りはいじめのターゲットにされる事はありません。更にグループの人数が多ければ多くなるほど、いじめのターゲットにされる確立は低下します。


 恐らく最も危険なのはスクールカーストの底辺にいて、かつオタクのように簡単に友達が作れない人です。私の知っているケースでは映画マニアの子が一人いました。彼は映画に関しては素晴らしい知識を持っていましたが、一般的なオタクのようなゲームやアニメといったものには興味がなく、そのせいでオタクのグループにも入れず、スクールカーストの底辺から抜け出す事もできずに孤立していき、結局はいじめの被害者になりました。


 彼のような特殊な趣味を持っている場合、もしくはクラスで自分だけがオタクというような場合、それだけでいじめの被害者になる可能性は大です。その場合は、あえて自分がオタクである事を隠して何食わぬ顔でスクールカーストの上層部に混ざる方がいじめられる確立はずっと減ります。尤も、それができるくらい世渡りが上手ければそもそもいじめられる事はないのですが・・。


 難しい問題ではありますが、恐らく最も簡単な解決策はクラス制度を廃止する事だと思います。それで完全にいじめが無くなるとは思いませんが、少なくともスクールカーストが成り立たなくなれば、いじめは確実に減るでしょう。政府の偉い人は「いじめを未然に防ぐ抜本策」なんて結論の出ない事をいつまでも考えるより、今いじめの被害に遭っている子供の為に何をするべきなのかを考えて欲しいと思います。